こどもの頭部打撲、大丈夫?こんな症状は要注意!〜小児科医が伝える受診の目安と対処法〜
- 2025年7月22日
- 事故予防
お子さんが頭をぶつけてしまった時、ご家族はとてもご心配だと思います。この記事では、お子さんの頭部打撲で特に注意すべき症状や、ご自宅での観察ポイント、そしてCT検査の必要性についてご説明します。
小児の頭部打撲、なぜ慎重な対応が必要なの?
お子さんが頭を打撲した際、頭蓋内出血や頭蓋骨骨折といった深刻な状態が起こることがあります。お子さんの脳はまだ発達途上であり、衝撃への感受性が高いため、成人とは異なる慎重な観察と判断が求められます。
当院では、お子さんの頭部打撲の診療において、以下の点を特に重視しています。
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詳細な問診と身体診察
いつ、どこで、どのように頭をぶつけたのか、その後の意識の状態、泣き方、吐き気や嘔吐の有無、けいれんの有無などを詳しくお伺いします。特に、お子さんの「普段の様子と比べてどうか」というご家族ならではの視点もとても大切です。
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危険信号の早期把握
脳への深刻なダメージを示唆する「危険信号」を見逃さないよう、細心の注意を払って観察します。
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ご家族との協働体制
ご自宅での観察が重要になるため、ご家族が安心して観察を続けられるよう、観察のポイントや再受診の目安を具体的にお伝えします。
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CT検査の適切な判断
お子さんへの放射線被ばくのリスクを考慮し、本当にCT検査が必要なケースかを見極めます。必要と判断した場合は、速やかに連携する医療機関へご紹介します。
【緊急性あり!】すぐに病院を受診すべき「危険信号」
以下の症状が一つでも見られる場合は、迷わずすぐに医療機関を受診してください。
- ■意識の状態がおかしい:
- 呼びかけても目を覚まさない、ぼんやりしている、視線が合わない
- 放っておくとすぐに眠ってしまう、起こしてもなかなか起きない
- いつもと違う異常な不機嫌が続く
- ■繰り返し吐く(頻回嘔吐): 何度も吐いてしまう場合は、頭の内部の圧が高まっている可能性があります。
- ■強い頭痛を訴える(特に悪化する場合): 小さなお子さんの場合は「頭が痛い」と言葉で伝えられないため、不機嫌が続いたり、頭を抱えるような仕草に注意が必要です。
- ■けいれんが起こる: 全身が突っ張る、手足がガクガクするなど。
- ■手足の動きがおかしい、歩き方が普段と違う、しびれを訴える(麻痺の可能性)
- ■顔色が悪い状態が続く
- ■危険な受傷機転がある:
- 高所からの転落や交通事故など。特に2歳未満で90cm以上、2歳以上で150cm以上の高さからの転落は要注意です。
- ■目や耳の周りが黒くなっている(パンダの目のようになる): 頭蓋底骨折の可能性があります。
- ■耳や鼻から血や透明な液体(髄液の可能性)が出ている
- ■たんこぶがぶよぶよとしていて、時間とともに拡大している
- ■ご家族から見て、普段と何か様子が違うと感じる場合
「いつもと違う」と感じたら、それは大切なサインです。
ご自宅での観察ポイントと期間
軽症の頭部打撲で、上記の危険信号が見られない場合は、ご自宅での丁寧な観察がとても大切になります。
- ■観察期間: 特に受傷後48時間(特に6時間以内)は注意して観察しましょう。症状は6時間以内に現れることが多く、特に3時間以内は要注意です。
- ■意識の状態をこまめに確認する
- ■安静を保つ: 激しい運動や頭を振るような遊びは避けましょう。静かに過ごせるようにしてください。
CT検査は必要なの?〜お子さんへの負担も考慮して〜
頭蓋内出血や頭蓋骨骨折を診断するためには頭部CT検査が有効です。しかし、CT検査には放射線被ばくのリスクがあります。
米国やカナダなどで提唱されている国際的なガイドライン(PECARN, CATCH, CHALICE ruleなど)も参考にしながら、お子さんの症状や頭をぶつけた状況、年齢などを総合的に評価し、CT検査が必要と判断される場合には、連携する医療機関へ速やかにご紹介させていただきます。
CT検査を推奨する主なケース:
- 意識レベルの低下
- 頭蓋骨骨折が触れる、またはその兆候(目や耳の周りが黒くなるなど)がある
- 頻繁な嘔吐
- けいれん
- 交通事故や高所からの転落など、高エネルギーの外傷
- 保護者から見て明らかに普段と様子がおかしい場合など
CT検査で異常が見られなくても、後から症状が現れる可能性もゼロではありません。そのため、ご自宅での継続的な観察が非常に重要です。
当院の姿勢〜「全てはこどもの笑顔のために」〜
平井みらいこどもクリニックは、お子さんの頭部打撲のような緊急性の高い状況でも、お子さんご本人はもちろんのこと、ご不安なご家族にも寄り添い、丁寧な説明とサポートを心がけています。
頭部打撲後の診察はもちろんのこと、ご自宅での観察中に少しでもご不安な点があれば、どんな些細なことでも構いませんので、どうぞお気軽に当院を受診ください。