【小児科医が伝えたい】インフルエンザワクチンをおすすめする一番の理由〜本当の目的は「脳症」などの重篤な合併症から守ること〜
- 2026年9月29日
- 予防接種
こんにちは。毎年インフルエンザの季節が近づくと、診察室で保護者の方々からこんなお声をよくいただきます。 「去年、ワクチンを打ったのにインフルエンザにかかってしまって……やっぱり打っても意味がないのでしょうか?」
我が子がつらい思いをしている姿を見るのは、親として本当にお辛いですよね。しかし、皆様に一番お伝えしたい大切な事実があります。
インフルエンザワクチンの最も重要な目的は、「感染を100%防ぐこと」ではなく、「インフルエンザ脳症や重症肺炎などの深刻な合併症、そして後遺症から子どもたちの命と未来を守ること」にあります。
今回は、なぜ今インフルエンザワクチンがこれほどまでに大切なのか、公的な医療データや当院の想いも交えながら、詳しくお話しさせていただきます。
インフルエンザは「ただの風邪」ではありません
インフルエンザと一般的な風邪(感冒)の最大の違いは、急激な高熱や全身症状とともに、生命に関わる重篤な合併症を引き起こすリスクが高いという点にあります。
子どもがかかりやすい主な合併症には、以下のようなものがあります。
- ・急性気管支炎・二次性細菌性肺炎(呼吸状態が悪化し、入院治療が必要になるケース)
- ・中耳炎・熱性けいれん(高熱に伴い発症し、急変するケース)
- ・インフルエンザ脳症(最も警戒すべき最重症の合併症)
この中でも、特に私たちが小児科医として深く警戒しているのが「インフルエンザ脳症」です。
最も恐ろしい合併症「インフルエンザ脳症」と後遺症の現実
インフルエンザ脳症は、ウイルス感染をきっかけに体内で過剰な免疫反応が起き、脳に急速かつ強い炎症や腫れが生じる病気です。発症するのは主に5歳以下の乳幼児ですが、小児期全般において注意が必要です。
インフルエンザ脳症は発症のスピードが極めて早く、熱が出てからわずか数時間〜数日の間に意識障害や繰り返すけいれん、異常行動などの症状が現れます。
そして何より恐ろしいのが、その予後(治療後の経過)の重たさです。 現代の医療をもってしても、インフルエンザ脳症を発症した場合、約10〜15%のお子様が命を落とし、高い確率で発達障害や麻痺、てんかんなどの重篤な後遺症が残ると報告されています。
インフルエンザ脳症は、お子様の人生に生涯にわたる大きな影響を与えます。だからこそ、この恐ろしい脳症の発症確率や重症化のリスクを少しでも下げる「防波堤」として、ワクチンの接種が極めて重要な役割を果たすのです。
データが示すワクチンの確かな効果
では、ワクチンを接種することでどれほどの予防効果が得られるのでしょうか。厚生労働省や日本小児科学会が公表しているデータをご紹介します。
1. 発症を抑える効果(発症予防)
6歳未満の乳幼児におけるインフルエンザワクチンの発症予防効果は約20%〜60%とされています。 「100%防げるわけではない」のは事実です。ウイルスは鼻や喉の粘膜から侵入するため、体内に抗体があっても最初の感染自体を完璧にシャットアウトすることは困難だからです。
2. 重症化や入院、死亡を防ぐ効果(重症化予防)
しかし、ワクチンの真価はここにあります。 体内にあらかじめ抗体を作っておくことで、万が一ウイルスが侵入しても増殖を抑え、脳や全身への深刻なダメージを防ぐことができます。
国内外の複数の研究データにおいて、ワクチン接種によりインフルエンザによる入院リスクが約40〜60%低減し、最重症化や死亡、脳症発症のリスクを大幅に下げられることが立証されています。
「かかってしまって高熱が出たけれど、数日で元気に回復した」「脳症にならずに済んだ」——これこそが、ワクチンが果たしてくれた最大の成果なのです。
ご家族で安心・納得して予防接種を受けていただくために
当院では、お子様とご家族が安心してワクチン接種を受けられるよう、以下の環境づくりに徹底して取り組んでいます。
- 🔹クリーンゾーン(感染分離)の徹底: 風邪などの感染症患者様と接触しないよう、入口から完全分離しており、感染症の患者様と接触しない導線を確立しています。
- 🔹痛みを和らげる工夫・選択肢の提供: 従来の皮下注射に加え、注射が苦手なお子様向けに痛みのない経鼻ワクチンなどの選択肢も整えています。
- 🔹自治体助成の活用サポート: 江戸川区の子どもインフルエンザ予防接種費用助成制度にも対応しております。手続きや自己負担額についても、スタッフが分かりやすくご案内いたします。
インフルエンザの流行期に入る前の10月〜11月中に接種を完了させておくことが最も効果的です(特に13歳未満のお子様は2回接種が推奨されます)。
インフルエンザワクチンは、「絶対に病気にかからなくする魔法の薬」ではありません。 しかし、「大切な我が子の命を守り、重篤な脳症や後遺症から未来を守るための、今できる最も確実な守り手」です。
今シーズンも、子どもたちの溢れる笑顔とご家族の安心を守るため、全力でサポートしてまいります。
